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【学級通信】(第068号)行事は人間性がモロにでるという話~僕たちが陰キャと陽キャに分かれる前~

行事は人間性がモロにでるという話~僕たちが陰キャ陽キャに分かれる前~

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毛並良好さんによる写真ACからの写真

 文化祭が終わりました。このクラスは見事、飲食部門優秀賞を獲得しました。嬉しい限りです。担任としても充実した文化祭でした。

さて、みなさんは文化祭どうでしたか?
楽しかった?つまらなかった?
どういう感想を持ちましたか?
来校された保護者の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけましたでしょうか?

私が担任として飲食団体に関わるのは10年ぶり2回目です。当時の先輩方に

「飲食は大変だよーつらいよー、けど、新人教員の登竜門だから、必ず経験した方が良いよー」

と言われました。最初の経験は「クレープ屋」でしたが、

文化祭中ほぼ調理室にいる状況でしたし、
足は疲れるし、
動かない生徒にイライラするし、
お金を間違えないか心配だし…

と超つらい思いをしたのを覚えています(遠い目)。しかし、先輩の言う通り、つらい経験ができて良かったと思っています。

10年ぶりの飲食は「焼きそば」でした。やはり、

調理室から出られませんし、
昼飯は食べられませんでしたし、
当然…足は疲れるし、
動かない生徒にイライラするし、
お金を間違えないか心配でした…

けど、若かった頃の疲れ方はしませんでした。一度でも経験したことがあるというのは重要ですね。

私はオジサンなので、いろんな経験をしています。そういうオジサン思考では、つらい経験をいっぱいした方が良いと思っています。

「楽(らく)したい…サボりたい…というものからは成長はありません」

クラスでも、部活でも、せっかくの文化祭をテキトーに過ごすより、一生懸命やって苦労した方が良いと思っています。なぜなら達成感や充実感を得られるからです。

その点、このクラスの出し物は苦労したと思います。特に調理室の子たちは大変だったことでしょう。2日で800食を作るっていうのは、かなりの重労働です。今回、使用できたコンロ数は、他の団体との兼ね合いで3つでしたので、提供可能な限界の食数だったと思います(1000食とか作ろうとすると、コンロ数と時間的に不可能)。

「キッチン連続シフトの子は、4時間ずっと焼きっぱなしの子もいました」

きっと疲れたはずです。私も居酒屋でバイトしていた頃を思い出しました。足がかなりダルかったです。キッチンの皆さん、焼きそばガンガン焼いてみてどうでしたか?

何事も経験だと思うのです。

焼きそば4時間焼く経験。
お客さんからお金もらって商品を売る経験。
店を作る経験(段ボールだったとしても)。

仕入れから製造、店舗開発、販売まで、全部、自分たちで経験できたことが素晴らしいと思います。

一方、良いことばかりではありませんでした。会計ミスがありました。たかが800枚のチケットを200円で売るだけでもピッタリと合わない…初日はチケットの枚数が合わないのに加え、残金がマイナス、2日目はチケットの枚数はピッタリでしたが、何故か売上が合いませんでした。

「1日中一人で働いていれば責任も1人でしょうが、みんなで働くと、1人1人が責任を持たなければなりません」

シフトを組んで働くということは、1人1人が責任を果たさなければ成り立たないということなのです。会計の難しさや、チケット管理の難しさ、キッチン、ホールの連携の難しさをミスから学んでくれればと思います(ラーメン屋が発券機でやっている理由がよくわかりますよね)。

私は常々、

「行事は人間性がでる」と言っています。

それは大人でも同じです。私の心配性な性格や、イライラして攻撃的になる性格は見事に出ていました。私は動かない生徒に嫌みばっかり言いながら過ごしてしましたが、隣のクラスの先生は、廊下でスマホいじって動かない男子に、

「なんか仕事を探して手伝おう。俺もよくわかんないけど、なんか探そう。なんか動こう。なんかはわからないけど」

と前向きな言葉をかけていました。まさしく人間性の違いってやつです。未熟な自分に反省です(あのレベルの先生になるまでにいったい何年かかるのか…)。

大人でこんなんですから、生徒はもっと人間性出まくりでした。今回も見事に出ていて最高に笑えました。研究して論文に書けそうです。

「文化祭等の行事における人間性に関する一考察」って感じでどうですかね?

冗談抜きに、保護者の方に、自分の家の子たちが(準備も含め)文化祭でどんなんだったかを見せたいものです。最高に笑えますよ。

文化祭は、涙あり、笑いあり、努力あり、ケンカあり、サボりあり、遅刻あり、愚痴ありって感じでした。

「学校での生徒の様子というのは、映画やドラマを見るよりもよっぽど面白いです」

(だからこの仕事は面白いんです)。部活でも同じようなものです(たぶんもっと激しいです)。

行事に取り組む生徒を見て私が思うのは、

(文句言うなら自分でやればいいじゃん)
(普通ここで遅刻するか?)
(もっとちゃんと仕切りればいいのに)
(早く帰りたいなら、手伝えばいいじゃん)
(何にもしないのに、なぜ教室にいられる?)

という感じです。どんな様子か伝わりますかね?文章で伝えるのはなかなか難しいですね…わかりやすく書くと、

「一つの目的に向かってみんな頑張ろーとは程遠く、かといって全員が放棄しているわけでもなく、何か起きるのを待っている。かといって指示が出てもなかなか動かなく、そのうちあれが悪いこれが悪い、あいつは悪いやつだ、こいつは良いやつだと愚痴や悪口が始まり、雰囲気悪くなったり、一致団結したりを繰り返す」

って感じかね(わかりづらっ)。

そんな様子の生徒を見て、(そんなんで将来仕事できんのか?)と嘆いたりするんですが、よく考えるとこの現象は当たり前なんです。だって文化祭って仕事じゃないですから。

「時給が発生しているわけではない」
「サボっても解雇されるわけではない」

という状況で一生懸命頑張るには、

● やりたいことがあるから頑張る
● 友達が頑張っているから頑張る

という動機しかありません。クラス全員が「これやりたい!」という出し物はなかなかないので、ほとんどは、

「友達が頑張っているから手伝おうかな~」
「困っているようだし協力するかな~」

という感じでしょう。

お金を出せば人は動きます。頼む側も簡単です。OO円あげるからこれやってって頼むだけですから。しかし、クラス単位で行っている行事はそうはいきません。だから人間性が出るんです(もろに)。

人間性…それは他の動物にはない、道徳心とか、思いやりとか、人と協力する社会性のことです」

皆さんは行事を通じて、こういう人間性を磨いていることになるわけです。さて、皆さん、

人間性は育まれましたか?時給の発生しない行事で、目的もって行動できましたか?」

これってけっこうこれからの人生で大切なことですよ。

前回の学級通信でも書きましたが、今後、AIを搭載したコンピューターやロボットが人間以上の仕事をしまくります。しかし、何をやらせるのか?(目的)を決めるのは人間です。人間性を磨くとはAIに負けない人間らしさを磨いていることなのです。

話を変えます。今回の文化祭でクラスと同じくらい私が達成感を感じられたのは、コンピューター部です。皆さん見に来ましたか?コンピューター部の今年の出し物は「eスポーツ」です。今、注目されているeスポーツ大会を開催しました。

いろいろ悩みながら、ウイイレサッカーゲーム)、モダコン(4対4のガンシューティングゲーム)、スマブラ(対戦アクションゲーム)で選手を募集しました。3年生がスマブラに予想以上にエントリーしてきて、かなり盛り上がりました。

もともとコンピューター部がeスポーツにしたのは、ダンス部とか軽音部とかとは違った客層(生徒の言葉を使うと陰キャ)に楽しんでもらおうというコンセプトからでした。面白かったのは、スマブラの決勝。三年生同士の戦いだったのですが、選手のキャラクター的には、まさしく陰キャvs陽キャの対決でした。試合前のインタビューで、

「ずっと緊張してるんですけど…陽キャには負けません!」

と、クラスで目立たなそうな子が言い放った後の会場の盛り上がりは最高でした。

けっきょく決勝では陽キャが勝つんですが、試合後にお互いが抱き合っていたシーンや、

「悔しいけど、とても楽しかったです」

と、陰キャが言っていたのが印象的でした。そんな話をコンピューター部にしたところ、

スマブラってゲームがすごいんですよね。まだ僕たちが陰キャ陽キャに分かれる前にみんなやっていたゲームなんです。陰キャの家に陽キャが遊びに行ったりしていた頃を思い出します」

と言われました。今の学校ってキャラ付けみたいな文化があって、生きづらい部分もあるんですが、そういうのを取っ払って楽しめる出し物をコンピューター部が開催できたことはとても価値があると思っています。また、「陽キャには負けません!」という名言を言ったあの子は、

「eスポーツ大会をコンピューター部が開催しなければ、100人以上の観客の前で緊張しながらゲームをやって目立つこともなかったでしょう」

そういう経験の場を提供できたことがとても嬉しいのです。

行事は本当にいろんな経験ができます。そして、普段目立たない子が目立てます。そういう場面が今回の文化祭ではたくさん見られました。来年は受験生ですが、

「苦労しながらも達成感のある文化祭をもう一度経験したいものです」