学級通信たまに教育雑感ブログ

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【学級通信】(第140号)受験に関係ないからやりたくない

受験に関係ないからやりたくない

ボクシング

先日ホームルームで

「あと5日くらいしたら12月だからね」

と言ったら、皆さんザワついていましたが、ついに12月になっちゃいましたね。焦る気持ちはわかりますが、やるべきことを一分一秒惜しんでやってください。ポイントは、生活時間を崩さないことです。ちゃんと学校に来て、ホームルームに出て、授業楽しんで、友達とお話して、そして受験勉強に励む。余裕がなくなってイライラしたり、学校サボったりすると、総合的に効率は落ちますのでご注意ください。

「そうは言っても、授業なんて楽しめないっすよ」

という人も多いと思います。N先生と我らがキャプテンの対決で、倫理の授業が盛り上がったりすることもあるようですが、毎回とはいきませんよね。私も授業をしている人ですから気持ちはわかります。毎回「神回だ!」って言われるような授業はなかなかできません。もしできていたらカリスマ塾講師にでもなっています。つまらない回もありながら、面白いことを見つけて楽しむ…それが授業に臨む姿勢だと思います。

半クラスの現代文で、熱い授業が行われました。担当の先生は、国語科のS先生です。どんな授業が行われたかというと「詩のボクシング」という内容です。(?)ってなりましたよね?私も最初に聞いた時には(?)となりました。Googleで調べると、

ja.wikipedia.org

「ボクシングのリングに見立てた舞台の上で2人の朗読者が自作の詩などを朗読し、どちらの表現がより観客の心に届いたかを競うイベント。キャッチコピーを「声と言葉のスポーツ」、「声と言葉の格闘技」としている。」

Wikipediaより引用)

という説明がありました。これが授業で行われるなんてドキドキしませんか?きっと後半クラスの子たちもそう思ったに違いありません。

第1試合 Dくん vs Kくん

なかなかの好カードです。彼らを知っている人たちからすればお金を払ってでも見る価値があります。

机をロの字型にして作られたリングの中で試合は行われました。ゴングが鳴り、審判の「ファイ!」の掛け声とともに詩の朗読が始まります。先制はDくん。持ってきた詩は、AAのスタッカート・カノン。

「カノン、僕はもう行かなくちゃ…」

。出だしの語りで、フワフワしていた観客が静かに聞き入ります。Dくんは、淡々と、それでいてしっかり感情を込め、一文一文を味わうように朗読します。読み終わったときには、清浄な空気が会場に流れていました。Kくんの用意した詩はスピッツ。ウケを狙った選詩により、守りに入ってしまったKくん。本来の持ち味を発揮できず、結果はDくんの勝利となりました。

第3試合 Oくん vs Hくん

メイウェザー vs パッキャオ くらいのビッグカードです。試合はOくんが先制。リングに上がるとすぐに着ていた服を脱ぎ捨てました。中から出て来たのは「責任を伴う自由」と書かれたTシャツ。この試合にかける彼の意気込みを感じます。読まれた詩はオリジナルのもの。タイトルはシン・校歌。

「責任ともなうこの自由。手にした僕らの物語。あぁXX、我らの母校」

衝撃の出だしです。続きを観客が期待します。

「…言われてなければやっていい、原則禁止もやっていい」

「剥ぎ取り式は剥ぎ取るな、汗吹きシートは燃えるごみ」

…次々に出てくる言葉、どよめきや笑いが会場を包みます。終わったときには大きな拍手が巻き起こりました。Hくんのターン。持ってきた詩は、ねじめ正一の愛人マンボ。Oくんの本気さに彼は奮起します。朗読の途中で本を投げ捨て、

「あい、あい、あいじん、あいじんマンボ♪」

踊りとリズムを刻みました。堂々としたパフォーマンスに観客は大興奮です。結果は僅差でOくんの勝利。Hくんは悔しさのあまりリングに崩れ落ちました。本校のパウンド・フォー・パウンドが決定された瞬間でした。

朗読した生徒たちは本当に素晴らしいです。受験に関係ないからやりたくない、みんなの前で詩の朗読をするのは恥ずかしい、逃げ出したくなったり、批判したくなるのが普通だと思います。しかし、そんなことはお構いなしにやり切るマインド。入試にはあまり出題されない内容であっても、その瞬間を楽しむ。そんな彼らはきっとどんな環境でもやっていけることでしょう。ふざけるわけでもない、逃げるわけでもない、ルールを守りつつ、最大限に自分を表現した彼らを私は誇りに思います。

本校での授業もぼちぼち終わります。残りの授業日数は、12月→12日間、1月→5日間です。期末考査後の授業を消化試合だと思わず、最後の最後まで楽しんで卒業していってください。皆さんのファイティングスピリッツを期待します。