【学級通信】(第145号)「失われた学校の自由」…のオチ
「失われた学校の自由」…のオチ
今年の一年生からよくあげられる意見に、
・学校の自由が失われた
・学校の自由を奪わないで
というものがあります。とても興味深いと思いませんか?一年生ですよ。入学してまだ一年間経っていないんですよ。三年生でもなく、二年生でもなく、一年生がそのように感じているところに、なぜなのだろうと気になりました。個人的に考察してみました。
まず学校のルールを確認です。6年間勤めている私が知る限り本校には以下の2つのルールしかありません。
1.頭髪に関して染色、脱色は禁止
2.バイトは原則禁止
こんなにもルールの少ない学校なのに、自由が失われたと言うことは、よっぽど茶髪にしたいとか、よっぽどバイトをしたいということなのでしょうか?
そもそもこの2つのルールは6年前から変わっていませんし、入学前からわかっているはずですから、自由が奪われた…なんて表現はありえないと思うのです。茶髪にしたいなら茶髪にしたいって書くはずですし、そもそも茶髪OKの学校に行くことも選べたはずです。バイトは原則禁止ですが、きちんと理由があれば、届け出を出してくださいと伝えているので、バイトをしたいって話も関係ないと思うのです。しかし、1年生からそういう意見が出てしまう。なぜなのでしょうか?
1年生に聞いてみると、
「先輩のインスタを見て入学したのに、思っていたほど自由じゃなかった」
…という話を聞くことができました。なるほど、先輩のインスタに憧れて入学してきているのですね。スゴい時代です。入学案内のパンフレットより、学校のホームページより、インスタで学校を決める。「学校選びはインスタグラム」…これが現代なのですね。
個人的には学校も公式インスタ持つべきだと思います。公式LINE、公式インスタ、公式Twitter、公式Facebookなど、どんどんSNSを使って発信していけば、もっと人気も上がるでしょう。炎上などのリスクもありますので運営を誰がやるかが難しいところでしょうが、子どもが減ってくる今後は、本気で検討する日も来るはずです。
しかし、現在ではSNSを使って学校(公式)が情報発信しているわけではありませんから、中学生は先輩たちSNSを見て、それを本物の学校だと思っているわけです。ここが大きなポイントな気がします。(見たことないので詳しくはわかりませんが)そこに写っている学校は、本当に本物なのか?という疑問をなぜ持たないのでしょうか?個人的にインスタは充実しているように見せるものだと思っています。そして何よりもインスタは優しい世界。盛っていることをいちいち否定しない。イイネの力は偉大です。
OO最高、OO大好き、OOは自由…
キラキラワードが並んでいる世界を中3が見て、OOはすげー自由で最高だーしかも進学結果も悪くない。中3から頑張っても届きそうだし頑張るぞ!って入学してみたら、思っていたよりも普通だった…ってオチだと思うのです。
そして「自由が失われた」とか言ってしまう
で、1年くらい経過すると、
(あ~私たちは見ていたのは実は虚構の世界なんだ)
と理解しつつ、インスタでの見せ方も覚え、
OO最高、OO大好き、OOは自由…
とシャープを付けて発信する側に回るわけです。そしてそれを見た中学生が…永遠に続く。つまり、
「自分たちで作った自由に、自分たちで騙されていた」
という落語のオチようなことが実際に起きているのではないかという考察でした(ちゃんちゃん)。
ちなみに、本校での教員生活も長くなりましたけど、私的には6年前も、今も、何にも変わらず自由だと思います。3年生になって茶髪禁止が言い出された6年前も、今の一年生も同じです。自由が失われたというSNSに流されて不自由感を増大させるより、多様性が受け入れられることを信じて、自分なりの生き方をした方がよっぽど自由だと思います。…まあ、こんな何の力もない一教員の一方的な話しではなく、生徒と教員が学校の自由について話せる場があれば一番いいんですけどね。